第二海堡 (1)

 

東京湾要塞 series 1 (3)
第二海堡中央観測塔
(1)【第二海堡】千葉県富津市
防空指揮所(観測台)です。手前は27糎加農砲中央砲塔の砲塔井の穴の跡です。

第二海堡

第二海堡(かいほう)は、千葉県富津岬と神奈川県三浦半島走水の間の水深8~12mの海中に築かれた面積41,000㎡の巨大な海上要塞です。大正3年(1914年)6月に完成しました。
位置は、東京湾要塞(1)(2)をご覧ください。

2024年1月5日に、第二海堡・猿島上陸ツアーに参加してきました。

 第二海堡(千葉県富津市)
  第一海堡の西方2,577m
 ・起工:明治22年(1889年)7月
 ・竣工:大正3年(1914年)6月
 ・建設期間:25年
 ・除籍:昭和2年(1927年)年 (海軍へ海軍へ)

戦後の第二海堡


第二海堡は、昭和20年(1945年)の敗戦によりアメリカ軍に接収されたあと、1955年に返還されました。その後、渡し舟で釣り人が渡航していた時期もあったようですが、護岸の侵食が進み、2005年6月末に立入りが禁止されました。
現在は国土交通省の管轄で、(一財)海上災害防止センターの消防演習場などが設置されています。

第二海堡遠景
(2)【第二海堡】千葉県富津市
第二海堡新護岸
(3)【第二海堡】千葉県富津市
周囲は鋼管矢板。
第二海堡2004年
(4)【第二海堡】千葉県富津市
三笠ターミナル/猿島ビジターセンターの展示パネルを複写させてもらいました。2005年撮影の護岸工事前の状況です。砲塔の多くが残っています。

遺構の多くは、敗戦時のまま保存されていましたが、長年の波浪により護岸の崩落が進み、流出した土砂が航路を埋めてしまう危険が生じたとのことで、2007年から鋼管矢板による新たな護岸工事が行われ、その際、左翼右翼と中央部南側など多くの遺構が削平されてしまいました。
一方で、2018年1月に開催された政府の「観光戦略実行推進タスクフォース(第17回)」において、民間事業者より「今後公開を希望する施設」として第二海堡が提案されたことを受け、2019年より一般に公開されることになりました。とのこと。
しかし、護岸工事の際、遺構の保存がまったく考慮されていないなど、経緯にちぐはぐ感があります。公開が民間発ではなく、政府主導のツルの一声だったという話もありました。

第二海堡の上陸は、旅行代理店主催のツアーに参加(事前予約)する必要があります。第二海堡の公式ポータルサイトはこちら↓↓です。

サイトをのぞいてみると、私が行った半年前(2024年1月)とはけっこう変わっていました。
半年前の旅行代理店は、JTB、はとバス、クラブツーリズム、ローソンエンタテインメントあたりだったのですが、最近見ると知らない名前の旅行代理店がけっこう参画しています。
ツアー内容は旅行代理店それぞれで、第二海堡上陸・見学のみのものから、猿島に寄ったり、海軍カレーを食べたり、宿泊付きもあります。
集合解散地点はいろいろですが、船はほとんどが横須賀市三笠桟橋発で、一部富津発もあるようです。
料金は、第二海堡渡航見学のみ(所要時間160分)でも約10,000円と高めです。

なお、第二海堡は、1979年公開、松田優作主演の「蘇る金狼」のロケ地だったそうで、映画で平成の改修前の様子を見ることができるとのことです。

第二海堡上陸ツアー

2024年1月5日に、JTBの第二海堡・猿島上陸ツアーに参加してきました。8,000円でした。

第二海堡繋船場
(5)【第二海堡】千葉県富津市
繋船場(けいせんば)(着船場)です。手前は明治大正期の北桟橋です。当時の石積みが残っています。
第二海堡北側建物
(6)【第二海堡】千葉県富津市
北側着船場前倉庫です。燃料保管庫ではないかとのことです。門から先が海上災害防止センターの消防演習場です。
第二海堡中央観測塔
(7)【第二海堡】千葉県富津市
27糎加農砲中央砲塔脇の防空指揮所(観測台)です。どこの解説にも書いてないのですが、おそらく陸軍が撤退し、27糎加農砲が撤去された後の海軍時代のものだと思います。(8)の写真を見ると分かりますが、27糎加農砲砲塔井のすぐ脇にあるので、もし砲身があれば、旋回すると当たってしまいます。煉瓦の積み方もいいかげんです。
第二海堡配置図
(8)【第二海堡】千葉県富津市
写真は東京湾海堡ツーズム機構webサイト「東京湾の要塞〜第二海堡〜」からお借りしました。上は、護岸工事前、下は現況です。遺構の多くが削られてしまっていることがわかります。

 三笠ターミナル発 東京湾要塞を海からめぐる!第二海堡・猿島上陸ツアー
(株式会社JTB 横須賀支店)
 2024年1月5日
 12:15  横須賀市三笠公園前三笠ターミナル集合
 12:45 出発 ~ 猿島上陸・見学(約1時間) ~ 第二海堡上陸・見学(約1時間)
 16:10  観音崎解散(希望者 → 16:45 三笠ターミナル)

上陸ツアーとしては格安だったので飛びつきましたが、これは、横須賀市の観光推進アクションプラン「ルートミュージアム周遊促進事業」にもとづく横須賀市の補助金が入っているとのことでした。現在同じプランは見当たりません。

悪天で出航できない場合は、前日の夕方までに連絡があるとのことで、この場合は返金されますが、出航しても、波などの影響で上陸できないことがあり、その場で「上陸」→「周遊」ツアーに変更され、返金はありません。
上陸率は66%(50%と言っていた方もいました)だそうです。ただ、「上陸」→「周遊」に変更の件は、事前にメールで送られてきた文書には一切書いてありませんでした。

船は猿島渡航と同じ株式会社トライアングル、案内は猿島砲台や千代ヶ崎砲台のガイドさん(猿島公園専門ガイド協会)でした。旅行代理店がかわっても、実働部隊は同じみたいでしたが、最近はどうでしょう。
ガイドさんは手慣れた感じで良かったです。島内の自由散策は不可ですが、貸し出されたワイヤレスのイヤホンが優れもので、多少場所を離れても、話を聞き漏らすことはありませんでした。
第二海堡の見学コースは、繋船場から中央砲塔、そこから南岸側に降り、15糎加農砲砲塔を下から見ながら右翼(西側)の掩蔽部へ向かい、15糎加農砲砲塔上から繋船場に戻るというルートです。ガイドさんの話を聞きながらの約1時間の行程でした。

三笠ターミナル/猿島ビジターセンター(横須賀市小川町27-10)です。猿島渡航、第二海堡ツアーの拠点施設です。1階にはチケットターミナル、待合所、観光案内所、2階には猿島や第二海堡関係の展示があります。三笠公園の隣接地です。専用駐車場はありません。

東郷平八郎
(9)【三笠公園】神奈川県横須賀市
東郷平八郎像と記念艦(戦艦)三笠です。
猿島砲台
(10)【猿島】神奈川県横須賀市
猿島は、BBQや磯遊びなど、砲台見学以外の来訪者も多そうでしした。猿島の写真は、2023年12月です。
(11)【猿島砲台】神奈川県横須賀市
(A)塁道(切り通し)と隧道、(b)塁道と弾薬庫、(c)揚弾井(D)防空指揮所です。映えスポットはいろいろありますが、残念ながら、陸軍時代の砲座はすべて非公開です。国指定史跡です。

第二海堡の前に猿島を見学しましたが、猿島砲台に興味のある方は、個人で猿島に渡り、猿島公園専門ガイド協会さんの「専門ガイドツアー」(600円)に参加した方が、普段施錠してある場所まで案内してくれるので良いと思います。写真(11)左下の「揚弾井(ようだんせい)」などは、「専門ガイドツアー」に参加しないと見ることができません。
猿島に個人で行った場合は、入園料と乗船料往復で2,000円(横須賀市民は1,000円)で、上記の専門ガイドツアーは別途オプションになります。

感想としては、「東の軍艦島」とうたっていますが、私のようなマニアをのぞくと、はたして満足した人が何人いたのか。西の本家軍艦島ツアーは約4,000円。同額であったとしてもどうでしょう。ガイドさんも、アンケートでは猿島の方の満足度が高いとポロリと言ってました。
渡航時に巨大船に出会うようなサプライズもたまにあるようですが、天候によって上陸できないリスクを含めて考えると、何かしらテコ入れをしないと参加者は今後頭打ちになると思います。
ガイドさんの話では、掩蔽部(地下)がけっこう残っているようなので、そこを公開するとか、第一海堡を合わせて公開するとか、もっと魅力のあるツアーに育てていってもらいたいと思います。

参考にした文献などは、東京湾要塞(1)に掲載しています。

東京湾要塞(4)、第二海堡(2)につづきます。


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