用語集 戦争遺跡

用語集 戦争遺跡 (作業中)

幕末から昭和20年(1945年)の終戦に至る間の戦争遺跡の用語集です。あくまでも「遺跡」に関連するものなので、砲台などが中心になります。
随時更新していく予定です。太字にはリンクが貼ってあります。

隠顕砲 (いんけんほう)普段は地下に隠れていて、砲撃するときに上にもち上がもの。第二海堡(千葉県富津市)など。
掩体壕 (えんたいごう)おもに軍用機を敵の攻撃から守るためにつくった、アーチ型の(鉄筋)コンクリート製の横穴状施設。
掩蔽部 (えんぺいぶ)棲息掩蔽部。敵の砲火を避けるためにつくられた掩蔽(地下)施設。シェルター。兵舎、弾薬庫など。
横墻 (おうしょう)火砲砲座側面の防御壁。正面は胸墻(きょうしょう)。
海軍火薬廠 (かいぐんかやくしょう)神奈川県平塚市にあった海軍省直属の工場(工廠)。おもに爆薬・火薬などを製造していた。1929年(昭和4年)に爆薬部が京都府舞鶴市に移転、1939年(昭和14年)に支廠が宮城県船岡町に増設され、船岡支廠が「第一火薬廠」、平塚本廠が「第二火薬廠」、舞鶴爆薬部が「第三火薬廠」に改称された。
海軍工廠 (かいぐんこうしょう)海軍直属の軍需工場。おもに兵器を製造していた。
海堡 (かいほう)自然の海岸や島に設置した砲台の射程内では包含できないため、海中を埋め立てて人工島を造り、砲台を設置したもの。日本国内では東京湾に第一海堡(千葉県富津市)、第二海堡(千葉県富津市)、第三海堡(神奈川県横須賀市)の3か所がある。
海防陣屋 (かいぼうじんや)
克式 (かっしき)ドイツ、クルップ社製の火砲。
加農砲 カノン砲 (かのんほう)ほぼ水平に近い弾道での射撃が可能な大砲。砲身が長く、射程距離も長い。直接、目標に照準を合わせるので、海岸面に設置されることが多い。相手側にもその存在が発見されやすいので、防御面では不利。それを補うために、普段は地下に隠れていて、砲撃するときに上にもち上がもの隠顕砲 (いんけんほう)や、最初から鋼鉄製で装甲されたものもある。加農砲は当て字。日本陸軍において加農砲の略称・略字は「加」「K」。15糎加農砲であれば「15加」「12K」。
カポニエール側防穹窖(そくぼうきゅうこう)のこと。 
間隔連堡 (かんかくれんほう)多角式の台場を複数並べて側射を掛け、互いに死角を補い合うこと。品川台場はこの考えにもとづき台場群が配置された。大鳥圭介訳『築城典刑』に掲載。
観測所 (かんそくじょ)敵艦や敵上陸部隊の位置を把握し、砲撃に必要な諸元(方向・ 角度・発射の時期等)の算出を行ない、その結果を砲台に連絡する施設。観測所の中央部には、観測に用いる測遠機が置かれていた。観測所は、砲台に対して左翼右翼の2か所が設置され、敵艦と2か所の観測所で水平基線式(三角)測量を行った。円形のコンクリート製の半地下に鉄製の天蓋(屋根)のついた構造のものが多い。丸出山堡塁観測所(長崎県佐世保市)など。
監的所 (かんてきしょ)陸軍技術本部の射場で、火砲の命中試験の際に着弾の様子を観測したトーチカ。
穹窿 (きゅうりゅう)アーチ状(かまぼこ型)の建築構造物。掩蔽部の天井部分など。
臼砲 (きゅうほう)
斤 (きん)砲弾重量。キログラム。幕末から明治初期にかけて砲呼称に「斤」が用いられた。「四斤山砲」は、幕末の日本に導入され、戊辰戦争から西南戦争にかけての主力野戦砲として使用された。オランダ製の「二十四斤加農」は、品川台場など海防用として普及し、長州藩による下関の攘夷戦などでも主力砲として使用された。
胸墻 (きょうしょう)火砲砲座正面の防御壁。盛土や石積、レンガ積があるが、明治後期以降はコンクリートで補強されることが多くなった。
側面の防御壁は横墻(おうしょう)、後方は背墻(はいしょう)といわれる。壁面には、「弾室」と呼ばれる弾丸の仮置き場の凹みがある。
高角砲 (こうかくほう)空中目標を主として射撃する火砲。海軍の呼称。陸軍における「高射砲」の別称。防衛省では「対空砲」。
口径 (こうけい)砲や銃の砲(銃)身内径、すなわち砲(銃)弾の直径を表す用語。ただし、砲の場合は二つの意味があり、(1)砲身内径ととともに、(2)砲身長を示す単位(算出するための数字)として、その砲の口径が用いられる。
対馬要塞の豊砲台砲「45口径40糎加農砲」を例にすると、「40糎(センチ)」は(1)で、砲身内径、砲弾の直径。「45口径」は(2)で、正確に言えば「45口径長」。「45口径40糎加農砲」は、40×45=1800cm=18m、つまり砲身長は18mとなる。
高射砲 (こうしゃほう)空中目標を主として射撃する火砲。陸軍の呼称。海軍における「高角砲」の別称。防衛省では「対空砲」。
工廠 (こうしょう)軍隊直属の軍需工場。海軍は「海軍工廠」、陸軍は「陸軍砲兵工廠」、「陸軍造兵廠」、「陸軍兵器廠」。組織の再編により、名称にも変遷がある。
参式 (さんしき)フランス、サンシャモン社製の火砲
三点濾過槽式井戸 (さんてんろかしきいど)3区画の沈殿濾過槽と井戸(貯水槽)。周囲の雨水等を集水し濾過・貯水する施設。明治期の砲台にはかならずある定型的な施設。千代ヶ崎砲台(神奈川県横須賀市)、吉坂付属堡塁(福井県高浜町)では掩蔽部に設置されている。
斯加式 (しかしき)フランス、シュナイダー・カネー社製の火砲。陸軍が沿岸要塞の備砲として購入。
試験場 (しけんじょう)「射場」を参照。
射界 (しゃかい)射撃が可能な範囲、二次元(平面)的な角度。
射場 (しゃじょう)射場(試験場)とは、大砲や機関銃の弾丸速度や空気抵抗の測定、命中・貫通・耐久性などの試験などを行う陸軍技術本部の実射撃試験場。陸軍で使用する大砲や弾薬は、射場で試験検査を受けて実戦配備された。
伊良湖射場(現愛知県田原市)、富津射場(千葉県富津市)など。
昭和16年(1941年)の組織改編によって、陸軍兵器行政本部第一陸軍技術研究所所管の「試験場」となる。
射線 (しゃせん)射撃を行う際の、銃砲身の軸の延長線。
射入窖 (しゃにゅうこう)陸軍技術本部の射場で、射撃試験の的となる一方が塞がれたコンクリートのトンネル状の施設。
首線 (しゅせん)大砲などの火器が主に向いている方向。
水中聴測所 (すいちゅうちょうそくじょ)水中聴音所。水中聴音機(ソナー)で、潜航して侵入する敵潜水艦を探知し、機雷を起爆するなどにして攻撃するための施設。観音崎水中聴測所(神奈川県横須賀市)など。海軍防備衛所の施設。観音崎の水中聴測所は陸軍の試験施設。
棲息掩蔽部 (せいそくえんぺいぶ)掩蔽部のこと。敵の砲火を避けるためにつくられた掩蔽(地下)施設。シェルター。兵舎、弾薬庫など。
速射砲 (そくしゃほう)短い間隔で連続して発射可能な火砲。大口径・重砲化による射程と破壊力の強化ではなく、発射速度や旋回・俯仰速度を重視したもの。陸軍では、明治26年(1893年)に、
敵の上陸防御、水雷側防、水雷艇など小艦艇掃射を目的として速射加農砲を採用することとなった。
側防穹窖 (そくぼうきゅうこう)カポニエール。堡塁の周壕内に侵入してきた敵兵を側面から射撃するために、周壕隅の壁面に設置した狙撃室(地下室)。石原岳堡塁(長崎県佐世保市)など。
側防匣室 (そくぼうこうしつ)側防穹窖のこと。
台場 (だいば)幕末に、幕府や各藩において異国船の打払いを目的として設置した砲台。
戊辰戦争や箱館戦争や西南戦争では、堡塁や塹壕などの野戦陣地についても台場と呼ばれることがあった。
多角式要塞 (たかくしきようさい)幕末から明治期に築かれた台場や堡塁に採用された築城法。「稜堡式要塞(りょうほうしきようさい)」を参照。
弾室 (だんしつ)弾丸置き場。砲座の胸墻などにある凹みは即用弾丸置場とも呼ばれる。
弾薬支庫 (だんやくしこ)弾薬本庫に対して、独立した地区、離隔した砲台の弾薬を備蓄・保管する弾薬庫。
弾薬本庫 (だんやくほんこ)一要塞(複数の砲台・堡塁)分の弾薬(弾丸・火薬・火具など)をまとめて備蓄・保管する弾薬庫。旧観音崎弾薬庫など。
築城典刑 (ちくじょうてんけい)幕末の築城技術書。原著はオランダの兵学者ベル。江川太郎左衛門の命により大鳥圭介が翻訳し、洋式砲学の伝習所であった縄武館から万延元年(1860年)に発行された。幕末に築かれた稜堡式城郭などのテキスト。
築城部 (ちくじょうぶ)陸軍築城部。陸軍では、砲台・堡塁建築を「築城」と呼ぶ。要塞の砲台建設を担当した。昭和7年(1932年)7月、築城部は陸軍築城部に改称し、陸軍兵器廠が担当していた要塞の備砲工事業務も担当することとなった。
鎮守府 (ちんじゅふ)海軍の根拠地として艦隊後方を統轄した機関。横須賀鎮守府(神奈川県横須賀市)、呉鎮守府(広島県呉市)、佐世保鎮守府(長崎県佐世保市)、舞鶴鎮守府(京都府舞鶴市)。
伝令管 (でんれいかん)伝声管。明治初期から中期にかけて建設された砲台は、電気的な通信方法が整っていなかったので、砲台内の連絡は手信号や実声音、伝令員が行った。伝令管は陶器管などを地中に埋め込み、地上の観測所と地下の指令室間などの連絡を行った。
電灯所  (でんとうじょ)照明所やその他の砲台諸施設に電気を供給する発電所。内部に発電機を設置し、地下などに冷却用水槽を設けた
ものもある。埋設電線もしくは架空で送電する。
防備衛所 (ぼうびえいしょ)海軍が、重要港湾・海峡などへの敵潜水艦侵入を阻止するために設置した陸上拠点。施設だけを指す場合には水中聴測所(水中聴音所)とも呼ばれる。
刎ね出し (はねだし)幕末の稜堡式城郭や台場の石垣にある武者返し。
備砲 (びほう)砲台などに配備されている火砲のこと。
ブラフ積み (ぶらふづみ)
ベトンフランス語でコンクリート。陸軍の呼称。漢字表記は「比頓」。昭和期以前は無筋。
砲座  (ほうざ)大砲を備え、砲撃活動をする場所。砲座の中には大砲を設置した砲床がある。
砲床 (ほうしょう)大砲を設置した丸い面(台座もしくはピット状のもの)。一つの砲座に1ないし2の砲床がある。
砲身長 (ほうしんちょう)「口径(こうけい)」を参照。
砲側庫 (ほうそくこ)砲側弾薬庫。火砲の近くにあり、砲弾や火薬を直接供給するための地下式倉庫(掩蔽部)。扉が2枚で入口が食違いにななる。中間の壁にはランプを置くための点燈窓をもつ場合がある。東京湾や由良要塞では、砲弾を地下の砲側庫から吊り上げる設備(揚弾井)を備えている。
砲隊長位置 (ほうたいちょういち)砲台、堡塁に設置されている目視観測所、指揮所。遺構としては「観測所」に似るが、砲台長位置には測遠機を置くための中央の台がない。砲台の編成は、砲塔砲の場合、砲台長(大尉級)のもと各砲塔に区分される。一砲塔は一砲台隊に属し一砲台長(少尉級)が指揮する。
砲台 (ほうだい)銃座、砲座、指揮所、観測所、兵舎や弾薬庫の掩蔽棲息部などからなる要塞(陣地)うち、旧陸軍では、海上の敵艦もしくは敵上陸部隊を砲撃目標としている海岸砲台を「砲台」としている。
砲塔砲 (ほうとうほう)砲塔加農砲。大砲を鋼鉄製の囲い、操作員や機構を下部に置いて保護すると同時に、多方向に照準し発射できるようにした回転式のプラットフォーム。設置穴を砲塔井と呼ぶ。艦砲や大正・昭和期の砲台。
堡塁 (ほうるい)銃座、砲座、指揮所、観測所、兵舎や弾薬庫の掩蔽棲息部などからなる要塞(陣地)うち、旧陸軍では、海岸砲台の背面を守る陸戦砲台を「保塁」としている。敵艦船攻撃用の機能をも備えたものを「堡塁砲台」としている。
保管転換海軍砲 (ほかんてんかんかいぐんほう)大正11年(1922年)2月に調印されたワシントン海軍軍縮会議条約批准以降に、建造中あるいは準備中であった海軍艦船の砲塔形式の加農砲を陸軍要塞に移設したもの。砲塔の改修は呉海軍工廠が担当し、試射の後陸軍へ引き渡された。
星形要塞 (ほしがたようさい)「稜堡式要塞(りょうほうしきようさい)」を参照。
御影石  (みかげいし)砲台掩蔽部入口上部や用地標石など、旧陸軍が好んで用いている。明治10年代の観音崎第一砲台(神奈川県横須賀市)などでは、砲座前面の石積(]胸墻)に御影石の巨石が使用されている。
要港部 (ようこうぶ)海軍の機関で、海軍の根拠地として艦隊の後方を統轄した機関。
要塞 (ようさい)陸軍が統轄した国土防衛の拠点。軍港や外敵の侵攻を阻止しうる海峡や島嶼に配置され、それぞれ砲台・堡塁群よって防衛網が構築された。
明治18年(1895年)に制定された『要塞司令部条例』第一条では「永久の防御工事を以て守備する地を要塞と称し各要塞には其地名を冠し某要塞と称す」としている。
『要塞地帯法』により、要塞を中心に一定距離内が要塞地帯に指定され,この地域(第1区から第3区)では、立入り、撮影、模写、測量、築造物の変更、地形の改造、樹木の伐採などが禁止もしくは制限された。
東京湾要塞、父島要塞、津軽要塞、舞鶴要塞、由良要塞、呉(広島湾)要塞、下関要塞、豊予要塞、長崎要塞、佐世保要塞、壱岐要塞、対馬要塞、奄美大島要塞、基隆要塞(台湾)、澎湖島要塞(台湾)、鎮海湾要塞(朝鮮)、永興湾要塞(朝鮮)、旅順要塞(関東軍)の他臨時要塞もあった。それぞれに要塞司令部が置かれた。
揚弾井 (ようだんい)地下の弾薬庫から砲弾を吊り上げるための竪穴空間。チェーンのようなもので吊り上げていた。東京湾要塞、由良要塞など。
榴弾砲 (りゅうだんほう)高仰角の射撃を得意とする。同口径のカノン砲(加農砲)に比べて砲口直径(口径)に対する砲身長(口径長)が短く、低初速・短射程ではあるが軽量でコンパクト。日本陸軍において榴弾砲の略称・略字は「榴」「H」。15糎榴弾砲であれば「15榴」「15H」。
稜堡式要塞 (りょうほうしきようさい)星形要塞。火砲に対応するため15世紀後半にイタリアで考案された築城法。火砲による攻撃に対して、標的となり、かつ守備側からの砲射の邪魔にもなる城壁(高石垣)をやめ、全体が低重心で砲弾の衝撃を吸収しやすい幅広の土塁を築いている。
稜堡」とは、側射のために塁壁から外に向かって突き出した角の部分のことで、銃撃戦の際、死角を無くすために考案された形状。「稜堡」をもつものが典型的な「稜堡式」であり、「星形要塞」とも呼ばれる。「稜堡」のない単純な四角形・五角形などは、「星形要塞」に対して「多角形要塞」と呼ぶ。ヨーロッパでは「星形要塞」の進化型として「多角形要塞」がある。銃撃戦に対して砲撃戦が主流になる中で手間のかかる「稜堡」が省略されることで「多角形」が成立した。
日本では、五稜郭(北海道函館市)や龍岡城(長野県佐久市)などの「城郭」は星形、品川台場(東京都品川区)、鳥取藩由良台場(鳥取県北栄町)、弁天台場(北海道函館市)など「台場」はおもに多角形を採用しているが、天保山台場(大阪府大阪市)のように、台場でも星形のものもある。
多角形は、富津元洲堡塁砲台(千葉県富津市)や石原岳堡塁(長崎県佐世保市)など、明治時代の堡塁でも採用されている。
「稜堡式要塞」の典型は「星形要塞」であるが、分類上「多角形要塞」を「稜堡式要塞」に含む場合と除外する場合がある。
煉瓦 (れんが)
塁道 (るいどう)