第三音更川橋梁・第二音更川陸橋・第四音更川橋梁

 

旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群 (2)
第三音更川橋梁
(1)  【第三音更川橋梁】
2026年5月撮影

音更川 泉翠峡の橋梁(陸橋)

旧国鉄士幌線(しほろせん)の第三音更川橋梁・第二音更川陸橋・第四音更川橋梁は、泉翠峡(せんすいきょう)と呼ばれる音更川(おとふけがわ)の渓谷部に築かれています。いずれも北海道上士幌町に所在します。

士幌線は、大正14年(1925年)12月に帯広と士幌間で営業を開始し、その後、十勝三股駅まで延伸するにあたって昭和11年(1936年)に建設されたのが第三音更川橋梁・第二音更川陸橋・第四音更川橋梁です。前回投稿したタウシュベツ川橋梁はこれら橋梁群の上流部にあり、翌昭和12年に建設されました。十勝三股駅まで完成し供用を開始したのは昭和14年(1939年)です。
昭和28年(1953年)7月には、糠平(ぬかびら)ダムが着工され、これにともない、士幌線は第三音更川橋梁の先から幌加駅間が音更川右岸(西岸)側に付け替えられています。
士幌線の概要は前回の投稿でまとめています。

士幌線糠平湖周辺図
(図1)  【旧国鉄士幌線 糠平湖周辺図】
背景図はカシミール3Dで作成。
士幌線泉翠峡周辺図
(図2)  【旧国鉄士幌線他 泉翠峡周辺図】
背景図はカシミール3Dで作成。

第三音更川橋梁・第二音更川陸橋・第四音更川橋梁が建設された泉翠峡は、平地のない難所です。第二音更川陸橋付近は、狭い渓谷の崖下川岸に第二音更川陸橋が築かれ、中段に糠平国道(国道273号線)の旧道が、崖上部に士幌線新線の陸橋とトンネルがあり、一部は交錯しています。

第三音更川橋梁・第二音更川陸橋・第四音更川橋梁のうち、第三音更川橋梁・第四音更川橋梁は、国道273号線バイパスから見ることが可能ですが、第二音更川陸橋は少々分かりにくい場所にあります。
今回(2026年5月)は、ぬかびライフさんのプライベートツアーでご案内いただきましたので、ルートの詳細についてここでの紹介はやめておきます。ヒグマの心配がなければ難しい場所ではないのですが。。

第三音更川橋梁

第三音更川橋梁(写真1・2)は、昭和11年(1936年)竣工の全長71m、10mアーチ2連、32mアーチ1連、10mアーチ1連のコンクリート製アーチ橋です。コンクリート製としては、戦前の北海道の鉄道で最大径間のアーチ橋になります。平成11年(1999年)に登録有形文化財に登録されています。
保存修復工事が行われていて、現在敷かれている線路はその時に設置されたものです。レールも当時のものかどうかは不明。
下の湖面は、昭和35年(1960年)竣工の元小屋ダム湖、となりの鋼製アーチ橋は、昭和51年(1976年)に竣工した国道273号線の泉翠橋です(写真2(C))。(写真2(A))は泉翠橋から撮っています。

第三音更川橋梁
(2)  【第三音更川橋梁】
(A)2021年6月、(B)(C)2026年5月撮影(A)泉翠橋から、(C)復元線路、右が泉翠橋

【第三音更川橋梁】
北海道河東郡上士幌町
平行する泉翠橋を糠平側に渡ってすぐの路肩に駐車が可能です。

第二音更川陸橋と新線・旧道

第二音更川陸橋(写真3~8)は、国道273号線バイパスの鱒見トンネルの南側にあります。鱒見トンネルと帯広側の鱒見覆道の間からわずかに見えそうですが、運転していると一瞬で分からないかもしれません。
第二音更川陸橋は、音更川の崖に沿って築かれた川を渡らない「陸橋」で、全長73m、5連のコンクリート製アーチ橋です。陸橋から南側へは石垣の護岸が続いているようですが(写真4)、現地ではそこまで気が回りませんでした。
第三音更川橋梁と同じ昭和11年(1936年)竣工。登録有形文化財には未登録です。

第二音更川陸橋
(3)  【第二音更川陸橋】
2026年5月撮影、国道273号線旧道(写真9(A))から。
第二音更川陸橋
(4)  【第二音更川陸橋】
2026年5月撮影。
第二音更川陸橋
(5)  【第二音更川陸橋】
2026年5月撮影。
第二音更川陸橋
(6)  【第二音更川陸橋】
2026年5月撮影。
第二音更川陸橋
(7)  【第二音更川陸橋路盤】
2026年5月撮影。

【第二音更川陸橋】
北海道河東郡上士幌町
国道273号線バイパスの鱒見トンネルの南側にあります。

第二音更川陸橋と泉翠峡
(8)  【泉翠峡と第二音更川陸橋】
2026年5月撮影、上流側から。

この周辺は、泉翠峡と呼ばれる音更川渓谷部の難所で、とくに第二音更川陸橋付近には平地がありません。

国道273号線旧道と士幌線旧線新線
(9)  【国道273号線旧道・士幌線】
2026年5月撮影、(A)国道273号線旧道、(B)旧道から第二音更川陸橋(士幌線旧線)、(C)旧道から士幌線新線陸橋。

第二音更川陸橋付近では、崖に沿って、士幌線旧線(第二音更川陸橋)、国道273号線旧道、士幌線新線が上下に並んでいます(写真9)。
最も上部に建設されている新線は、一部の陸橋(写真9(C)・10)以外は、第二音更川陸橋上部の第一糠平トンネルから糠平方面はほとんどの区間がトンネルです。トンネルは現在閉鎖されているようなので、この区間の新線を通しで歩くことはできません。

士幌線新線
(10)  【士幌線新線陸橋】
2026年5月撮影、国道273号線旧道から。
旧国鉄士幌線線路跡
(11) 【士幌線旧線線路跡切通】
2026年5月撮影、国道273号線旧道交差部から北側。この先に第四音更川橋梁。旧道の方が高い位置にあるため、交差部分(写真反対側)は埋められています。

(写真9(A))は、国道273号線の旧道跡です。
現在の国道273号線は、帯広から士幌、糠平を経由して上川町、さらにオホーツク海側の紋別までつながっていますが、このうち上士幌から三国峠までの区画は「糠平国道(糠平街道)」と呼ばれています。
その前身は明治時代にさかのぼるようで、ユウンナイ(現糠平湖底周辺)の広大な官有林の開発のために、明治25年(1892年)ごろから調査道の開削が進められました。
これには、北海道集治監釧路分監(釧路集治監/釧路監獄)の囚人が従事しました。明治20年代の北海道開発は集治監の囚人を労働力として使役させることが一般的で、各地で「囚人道路」が建設されました。この囚人労働(外役)はあまりに過酷であったことから明治27年(1894年)に廃止になりますが、ここでは、大正7年(1918年)にも、十勝監獄(北海道集治監十勝分監)の囚人延べ6,000人を3か月間動員して約16kmの難工事を完成させています。
糠平街道は当時「音更山道」と呼ばれていました。鱒見覆道近くに記念碑「音更山道碑」があるようですが、後から知ったので見ていません。
ちなみに、士幌線の建設は、本州方面から連れてきた労働者を、奥地のタコ部屋に収容し、半強制的に使役させた「タコ労働」だったようです。実態は囚人労働と変わらなかったと思います。

その後、糠平街道(音更山道)は北海道道を経て、昭和45年(1970年)に国道273号線に昇格します。
現在の国道273号線バイパスは、泉翠橋から鱒見覆道・鱒見トンネル、糠平ダム正面の糠平大橋を通る快適な道路で、糠平大橋が完成した昭和58年(1983年)ごろまでに整備されたと思われます。

旧道橋脚
(12) 【国道273号旧道橋台】
2026年5月撮影。(写真8)と(写真13)の中間あたり。

(写真9(A))の国道273号線旧道は、過去の国土地理院の地図を参考にすると、第二音更陸橋と第四音更川橋梁の間で右折して音更川を左岸側に渡り、糠平ダムの堰堤を通って糠平方面に向かうルートが復元できます(図2)。(写真12)は音更川を渡る旧道の橋台で、橋桁は外されています。
この旧道は、右折部分(写真11の手前反対側)で士幌線旧線の切通を埋めているところから、昭和30年(1955年)の新線開通以降の道です。ただ、音更川を渡らず右岸の山中に向かうルートもあることから、国道273号線旧道のさらに以前の「音更山道」が、部分的にまだ残っているのかもしれません。

士幌線旧線、新線、国道273号線旧道が交錯するこのエリアは、時間をかけて歩きたくなる場所です。

第四音更川橋梁

第四音更川橋梁(写真13・14)は、全長91mで10m×2連のコンクリート製のアーチ橋が両岸に残っています。中央部36mは鉄の桁橋でしたが、今は撤去されています。
第三音更川橋梁・第二音更川陸橋と同じ昭和11年(1936年)竣工です。登録有形文化財は未登録です。

第四音更川橋梁
(13)  【第四音更川橋梁】
2026年5月撮影。
第四音更川橋梁
(14)  【第四音更川橋梁】
2026年5月撮影。

【第四音更川橋梁】
北海道河東郡上士幌町
国道273号線バイパスのすぐ横にあり、音更川とは反対側の道路際に駐車スペースがあります。

(動画)  【タウシュベツ川橋梁】

旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群、次回が最終回です。

【参考資料】
・宮脇俊三『廃線跡懐想 北海道編』JTB 2002年
・今尾恵介『新鉄道廃線跡を歩く1 北海道・北東北編』JTB 2010年
・NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンター『ひがし大雪アーチ橋散策地図』2017年
・ひがし大雪アーチ橋友の会Webサイト
 
(図1・2)の路線(旧線)は、国土地理院の以下の地図と空中写真から作成しました。
・ニベソツ山 5万地形図 1949年測量発行
・糠平 5万地形図 1956年測量、1958年発行
・芽登温泉 5万地形図 1956年測量、1958年発行
・糠平 2.5万地形図 1974年測量、1975年発行
・芽登温泉 2.5万地形図 1974年測量、1975年発行
・1947年米軍撮影空中写真
・1948年米軍作成空中写真

2021年6月、2026年5月現地、2026年7月17日投稿。