旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群 (3)

2026年5月撮影、国道273号線滝の沢橋から。
旧国鉄士幌線の延伸と新線
旧国鉄士幌線(しほろせん)全体の概要は、前々稿を参照にしてください。
士幌線は、大正14年(1925年)12月に帯広と士幌間で営業を開始した後、大正15年(1926年)に上士幌まで延伸しました。その後、しばらく延伸工事は中断していましたが、昭和9年(1934年)になって、十勝三股に至る「音更線(おとふけせん)」の建設工事が開始されました。「音更線」は、計画段階の呼称です。
このとき建設されたのが、前回までに投稿したタウシュベツ川橋梁、第三音更川橋梁、第二音更川陸橋、第四音更川橋梁(旧)と、今回投稿する第五音更川橋梁です。他に、大規模な橋梁としては第六音更川橋梁がありますが、まだ行っていません。

背景図はカシミール3Dで作成。

昭和12年(1937年)~昭和30年(1955年)。

昭和30年(1955年)~昭和53年(1978年)。
戦後、電力需要の高まりから、糠平(ぬかびら)ダムが建設されることとなり、昭和28年(1953年)7月に着工します。糠平ダム建設により、糠平駅(旧駅)やタウシュベツ川橋梁はダム湖の湖底に沈むこととなり、士幌線は、第三音更川橋梁の先から幌加駅間が音更川右岸(西岸)側に付け替えられることになりました。これにともない建設されたのが糠平川橋梁、三の沢橋梁、五の沢橋梁、第四音更川橋梁(新)などです。
このうち、糠平湖最上流部を右岸から左岸につなぐ第四音更川橋梁(新)は、13連の橋桁のガーター鉄橋です。橋桁・橋脚は撤去され、橋台の一部が残っているようです。
第五音更川橋梁・幌加駅跡
第五音更川橋梁は、旧幌加駅と旧十勝三股駅間の音更川に架かる全長109m、10m×6連、23mアーチ(河川横断部)1連、10mアーチ1連のコンクリート製8連のアーチ橋です(写真1・2)。タウシュベツ川橋梁の翌年、昭和13年(1938年)竣工です。
国道273号線の滝の沢橋(写真2(C))が展望地ですが、5月でも橋脚全体を確認することができません(写真1)。緑の季節では河川横断部ぐらいしか見えません(写真2(B))。北側から橋脚下に下りることは可能なようです。
なお、第五音更川橋梁と士幌線終点の十勝三股駅の間にある第六音更川橋梁も全長96mのコンクリート製アーチ橋ですが、躯体に亀裂が入り一部が崩落して非常に危険な状況にあるようです。

(A)(B)2021年6月撮影、 (C)2026年5月撮影、(A)第五音更川橋梁橋上、(B)隣接する国道273号線滝の沢橋から、(C)滝の沢橋。
第五音更川橋梁と幌加駅跡は、幌加除雪ステーションにクルマを止めて歩くことになります。コース案内はこちら。
幌加除雪ステーションには広い駐車場とトイレがあります。国道273号線では貴重な休憩ポイントです。
【幌加除雪ステーション】
北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷
第五音更川橋梁へは北へ約350m、幌加駅跡は南へ50mほどです。

2021年6月撮影、第五音更川橋梁と幌加駅間。
幌加駅(ほろかえき)跡(写真4~6)は、昭和14年(1939年)11月設置、昭和62年(1987年)3月23日に士幌線廃線と同時に廃止になりました。
島状の単式ホーム1面1線ですが、近隣に帯広営林局上士幌営林署の貯木場があり、そこにつながる貨物線が分岐していました。当時のプラットホーム、線路、ポイント分岐器(切替器)(写真6)が残されています。現状の駅名標は復元です(写真5(C))。
現地解説はこちら。

2026年5月撮影、プラット、ホーム・線路は当時のもの。遠方の建物は幌加除雪ステーション。

2026年5月撮影、(B)引込み線ホーム、(C)駅名標は復元。

2026年5月撮影。
第五音更川橋梁は平成11年(1999年)に、幌加駅プラットホームは平成29年(2017年)に登録有形文化財(幌加駅)に登録されています。
五の沢橋梁・三の沢橋梁・糠平駅跡
五の沢橋梁(写真8・9)は、昭和30年(1955年)に完成した長さ7mの小さなアーチ橋です。
三の沢橋梁(写真10・11)も昭和30年(1955年)竣工です。全長50mで、15mアーチ(河川横断部)1連と前後に10mアーチ2連のコンクリート製3連のアーチ橋です。
三の沢橋梁は、平成29年(2017年)に登録有形文化財に登録されています。

2026年5月撮影、五の沢橋梁上から北側、北海道自然歩道・東大雪の道の一部。

2026年5月撮影、五の沢下流側から。

2026年5月撮影、五の沢上流側から。
【五の沢橋梁】
北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷
近くの国道沿いに駐車帯があります。そこから歩いて5分程度です。

2021年6月撮影。

2021年6月撮影、北海道自然歩道・東大雪の道の一部。
【三の沢橋梁】
北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷
国道273号線沿いに広い駐車場が整備されています。駐車場からトロッコも運行しています。
五の沢橋梁・三の沢橋梁は、糠平駅跡の上士幌町鉄道資料館を起点とする北海道自然歩道・東大雪の道の一部で、橋上を歩くことができます。
なお、他に糠平川橋梁があります。ぬかびら源泉郷のビジターセンターひがし大雪自然館から200mほどの場所です。全長74m(63mの表記あり)の4連のコンクリート製アーチ橋です。もっとも行きやすい場所にあるのですが、まだ行っていません。三の沢橋梁と記憶が混同してしまい、2021年に行ったつもりになっていました。

2026年5月撮影。

2026年5月撮影、旧国鉄ヨ3500形(ヨ4842)、(B)奥の建物は上士幌町鉄道資料館。
糠平駅(ぬかびらえき)は、昭和12年(1937年)9月設置されましたが、これは旧駅で、現在は糠平湖の湖底に沈んでいます(図1・2)。糠平ダム建設にともなう新線の新駅は1955年(昭和30年)8月に移転、昭和62年(1987年)3月23日に士幌線の廃線と同時に廃止になりました。
駅舎は構内の南側(十勝三股方面に向かって左側)にあり、島式ホーム1面2線と駅舎前に貨物用副本線、駅裏に引込み線が敷かれていたようです。
糠平駅にも、帯広営林区署の糠平貯木場が設置されていました。
現在、跡地には、廃線の翌年に設立された上士幌町鉄道資料館があります(写真12)。当時の駅の遺構は見たところ現存しないようです。線路は、観光用トロッコ用に再敷設されたものですが、こちらのトロッコは現在営業をしていないようです。敷地内には、旧国鉄ヨ3500形(ヨ4842)車掌車が静態保存されています(写真13)。
【上士幌町鉄道資料館】
北海道河東郡上士幌町ぬかびら源泉郷
開館日:4月~10月(月曜日休館)
開館時間:9:00~16:00
入館料:100円
近くに、ひがし大雪自然館(ビジターセンター)もあります。
旧国鉄士幌線コンクリートアーチ橋梁群、中途半端ですが終わりにします。ただ、機会をみて再訪したいと考えているので、いずれ投稿する機会があるかもしれません。
【参考資料】
・宮脇俊三『廃線跡懐想 北海道編』JTB 2002年
・今尾恵介『新鉄道廃線跡を歩く1 北海道・北東北編』JTB 2010年
・NPO法人ひがし大雪自然ガイドセンター『ひがし大雪アーチ橋散策地図』2017年
・ひがし大雪アーチ橋友の会Webサイト
(図1~3)の路線(旧線)は、国土地理院の以下の地図と空中写真から作成しました。
・ニベソツ山 5万地形図 1949年測量発行
・糠平 5万地形図 1956年測量、1958年発行
・芽登温泉 5万地形図 1956年測量、1958年発行
・糠平 2.5万地形図 1974年測量、1975年発行
・芽登温泉 2.5万地形図 1974年測量、1975年発行
・1947年米軍撮影空中写真
・1948年米軍作成空中写真
2021年6月、2026年5月現地、2026年7月24日投稿。
